バレエ公演レポート

NEW 2023.9.14 更新

~感動の舞台~

バレエ公演REPORT


 

バレエアンサンブルガラ2024

2023.8.5(土)

クレオ大阪中央大ホール

 

 

  2022年夏にスタートしたマーティ株式会社が主催する「バレエアンサンブルガラコンサート」が、この夏もクレオ大阪中央大ホールにて盛大に開催されました。

「アンサンブル」とはフランス語で「共に、統一、調和」を意味する言葉です。その名の通り、今年も国内外で活躍するプロダンサーと、国内で日々研鑽を積んでいる共演ダンサーが集い、それぞれのバックグラウンドの良さを生かしつつも、新たな一つの調和された舞台を共に華やかに創り上げました。

第1部はバレエガラコンサート/国内外で活躍するプロダンサーの饗宴、第2部は眠れる森の美女より第3幕/プロダンサーと一般共演ダンサーによる共演という構成でした。

 

 第1部のバレエガラコンサートでは有名な古典作品はもちろん、個性豊かな創作作品まで、ダンサーが「今見てほしい!」と思う作品が出そろい、日本のファンへの想いとダンサーの躍動が感じられる舞台となりました。

 オープニングを飾ったハンガリー国立バレエ団の高森美結さんと森本亮介さんの「海賊」第1幕のグランパドドゥは、オープニングにふさわしい華やかさがありながらも、奴隷として競りにかけられる際の心情が深く演じられ観客の心をわしづかみにしました。

 

 続く「ドン・キホーテ」第1幕よりキトリのバリエーションを踊ったヴィクトリアン ステイト バレエ出身の山本奈那さんは、息を飲むほどの高度なテクニックで、余裕すら感じられる安定感があり、観客をスペインのバルセロナへ導いてくれるような踊りが印象的でした。

 

そして同じ「ドン・キホーテ」の作品からはオオツカバレエアカデミー倉内七さんにより、第3幕のキトリのバリエーションも見ることができ、バレエの技術はもちろんのこと、ダンサーのスタイルの良さから醸し出される品がなんとも可憐なキトリらしさを演出して観客の目を虜にしたりと、それぞれの持ち味を生かしたキトリを一緒に堪能できるのも、ガラコンサートならではでした。

 

 同様にクラシックバレエのハイライト作品としては、ポーランド国立ポズナン歌劇場の葛西ひかるさん、ドイツ州立ハレ歌劇場の森川礼央さんによる「ジゼル」第2幕のグランパドドゥが素晴らしく、この世のものではない妖精ジゼルと生きるしかない人間であるアルブレヒトの、儚く尊い愛が表現されていました。

 

また「パキータ」のエトワールのバリエーションを披露した佐々木須弥奈さんは、英国ロイヤルバレエ団で磨かれた安定感のあるテクニックで、ソロとは思えないほど会場全体を引き込むダンサーの品・迫力・力強さを感じさせてくれました。

 その他、「アレルキナーダ」のグランパドドゥでは、チェコ・ブルノ国立歌劇場バレエ団榊原百萌奈さん、小笠原祥真さんのコミカルな演技と二人の息の合ったコンビネーションで、会場中がハッピーになる踊りが繰り広げられました。演目中の手拍子が鳴りやまず、会場が一体となった作品でした。

 

また、クラシックバレエの代表作以外の様々なジャンルの作品を見られるところもアンサンブルガラの面白いところです。「a rainy day」はダンサー自身の振付作品で、夏の雨をテーマとした作品でした。昨年魅力的な踊りを披露してくれたポーランド州立オペラノババレエの立川透子さん奥薗将文さんでしたが、昨年から更にパワーアップし、創作の奥深さの新たな一面を見ることができました。

 

 「memories」はカザフ国立オペラバレエ劇場の橋本有紗さんとピアノによる生演奏との作品でした。ピアノ伴奏はお母さまが演奏されるという親子共演作品で、迫力のあるピアノメロディとダンサーとの息の合った掛け合いが魅力的でした。

 

雰囲気がガラっと変わり、ブルガリア州立スタラザゴラ歌劇場 から参加の須賀遥香さんと石郷朝暉さんの「Amora」は、リベルタンゴの曲にのせて踊る情熱的な創作作品で、ステージ上で見つめ合う二人の息づかいが肌で感じとれるようで、濃密な香が漂ってくるような大人な作品でした。

 

 最後の「ON THEON THE NATURE OF DAYLIGHT」は第1部の締めくくりにふさわしく、ドレスデン国立歌劇場の藤本佳那子さんとアレハンドロ・マルティネスさんの貫禄あるダンサーの姿と圧巻のパフォーマンスで観客を魅了しました。最後はカーテンコールが止まないほど、感動が心にとどまり続けました。

 

 第2部 の『眠れる森の美女 より第3幕 』はプロダンサーと多くの共演ダンサーが一つになって作りあげた作品で、作品の要となるポーランド州立オペラノババレエ団 東野瑞生さん演じるオーロラ姫とピッツバーグバレエシアター 中野吉章さんのデジレ王子の華々しい見せ場はもちろんのこと、「赤ずきん」などの童話のキャラクターたちのユーモアあふれる振付が印象的で、物語を引き立てていました。

 

「宝石の踊り」はコンクールにも挑戦している熱意ある中高生が中心となり、若さと希望に満ちた彼女たちの踊りと笑顔が、オーロラ姫の結婚に輝きをもたらし、まさに煌びやかな「宝石」のような踊りでした。

 

リードダンサーである富村京子さん、藤野暢央さんにより演出、構成された「花のワルツ」は、華やかな雰囲気と幸せに満ちた式典の空間を演出し、とても見応えのある作品でした。

 

 短いリハーサル期間の中、集い支え合い「仲間」となった共演ダンサーの皆さんが、とてもあたたかな舞台を作り出し、本番は結婚式の祝福の瞬間を観客とともに分かち合えるようなシーンとなりました。また、共演ダンサーはプロダンサーとリハーサルから本番の舞台までを共に過ごし、普段のレッスンではできない経験や学びを体感できる時間となりました。

スタジオの垣根を越えた「アンサンブルの輪」が本公演により広がることで共演ダンサーたちの刺激となり、今後も本公演自体が「今後の目標や成長のきっかけを掴む場所」として、その役割を果たし続けられれば幸いです。

そして、この「アンサンブルガラコンサート」が日本の観客の皆様に少しでも海外で活躍する多くの素晴らしい日本人ダンサーを知ってもらえる機会となることを願っています。