バレエ公演レポート

NEW 2024.11.25 更新

~感動のドキュメンタリー映画~

映画『コールミーダンサー』舞台あいさつREPORT


 

<インドで生まれたリアル ビリー・エリオット!> 

遅咲きのインド人バレエダンサーが 

夢に向かってまい進する感動のドキュメンタリー 

映画『コール・ミー・ダンサー』

主人公ダンサー マニーシュ・チャウハン

初来日&初舞台あいさつ

 

2024.8

 

 

 映画『コール・ミー・ダンサー』の11月29日公開に向けて、この度、現在はNYのダンスカンパニーに所属する、本作の主人公ダンサー、マニーシュ・チャウハンが8月に来日し、試写会にて舞台あいさつを行いました。

 

  初来日を果たしたマニーシュは、日本の観客の前で、初めての舞台挨拶を実施、「本当にうれしいです」「はるか日本までこうやって作品が届きました。きっと価値観とか文化で日本と共通している部分もあると思う」「ご覧になった皆さんにとって、ポジティブなインパクトがあったことを願っています」と感謝を告げました。

 

 今や、全てをダンスに捧げる人生を送るマニーシュだが、劇中で描かれているように、実は「小さなころ踊りは苦手だった」と言う。「通っていた学校で、合唱団で踊りをする時間がありましたが、その30分間は絶対にダンスをしたくなかったからお手洗いに隠れていたぐらい」と言い、そんな彼がダンスに興味をもったきっかけは『アフラトゥーン』というボリウッド映画だったことを振り返る。だが興味を持ちつつも、ダンスは<女子がするもの>という偏見があり、“踊る”ということについて苦手意識を持っていたことも告白。だが、「『みんなから注目をされたいなぁ』という気持ちがちょうど湧いてきたころだった」「スポーツとかそれまでやったことがなくて、シューズやウェアなどおカネがかかってしまうので、うちはそういうお金を出すことができなったし、勉強もちょっと苦手だった」という彼が見つけたのは、なんと<バク転>!!「映画(『アフラトゥーン』)を観た時に主役の方がバク転をしていて、『これだ!』と思いました。これをマスターしたらみんなの注目を浴びられるのでは、というところから始まったんです」と一風変わった“ダンスとの出会い”を話しました。だが、劇中でも描かれているように、そのバク転をきっかけに<ダンスの世界>に、どんどんのめり込んで行ったマニーシュ。「そもそも運動神経がよかったのではなかったのですか?」と言う質問に対しては「自覚はありませんでした」と恐縮。だが「映画を観た後に<バク転をやろう>と思った時に、すぐにできるようにはなりました」「割とすぐにメカニズムを理解することができて、少し練習して、すぐに実行することができたんです」と、並外れた身体能力を振り返りました。

 

 約5年間の密着の末に、完成したドキュメンタリーでもある本作。実は当初マニーシュは、完成する作品は「5分から10分くらいのものだった」と言います。そのため撮影も「1週間、10日、15日くらいかな」と思っていたら「1週間が過ぎ、1ヶ月が過ぎ、6ヶ月が過ぎ、1年が過ぎ…」「『いつ終わるんだ、これ』と思いました」と苦笑。「気づけば家族、自分の祖母などにも<会いたい>と言われ、自分のパーソナルな部分も、<これ以上自分のことを知っている人はいないのではないか>というぐらいになったのです」と笑っていました。

 

 様々な国で上映され、多くの賞を受賞している本作を通して、様々な出会いも経験したと言います。マニーシュが「なかなか自分の気持ちをオープンに話せることが無い」と言うバレエ界の男の子たちたちが、この映画を観てから(家族やキャリアの問題など)「自分と同じだ」と伝えに来てくれたことや、バレエをスタートしたのが遅い人、身体的な悩み、など「いろんな気持ちを僕に話してくれました」と述べ、他にも「ある女の子は映画を観て、ご両親に『ダンス、バレエを学ばせてくれてありがとう』と感謝のお手紙を書いたらしいんです。それを受け取ったご両親が学校に電話をしてどんな映画を見せたんだ、という風に仰ったらしいんですね。そんな風に感謝の気持ちをお嬢さんが伝えたのが初めてだったかららしいです」と言うエピソードや、本作を見たことで「映画監督を目指す息子を、<もう少し応援してみよう>という気持ちになった」と考えを変えた母親に出会ったことなど、映画を通して色々なリアクションがあったことを明かしました。

 

 そして、子供には失敗してほしくない親と、夢を追いかけたい子供の関係性について、マニーシュ自身の経験も重ねながら「それぞれに気持ちがもちろん正しい」「そういったことが、この映画をきっかけにオープンに、それぞれ思っていることを話し合える、そんなきっかけになったらなっていう風に思っているんです」と希望を伝えました。

 

 現在はNYの<ペリダンスカンパニー>に所属するマニーシュ。自身がインドでダンスを学んでいた時は、ダンスを「スマホとかYouTubeの動画で見て学んでいた」と言う彼の今後の夢は「ペリダンスカンパニーでのインド公演、ツアー」を敢行、「国際的な様々なカンパニーがツアーでインドを訪れて、いろんな方の生のパフォーマンスに触れる機会があれば、例えば<ダンスをやりたい>と思っている人が、本当に自分がやれるかどうかを見極めるきっかけの一つにして欲しい」と目標を掲げました。「そして、ある程度年齢を重ねたら、(自身にダンスを教えてくれた)イェフダと同じことをしたいと思っています」とも語るマニーシュ。「自分は本当に優しい方々に助けられました。だから、1人でもいい、2人でもいい。お返しをしたいと思っています。この道のりの中で手を差し伸べてくれた彼らと同じことを、僕は次の世代にバトンを渡すことで責任を果たしたいと思っています」と決意を語りました。

 

 そして最後に「映画のタイトルが『コール・ミー・ダンサー』というふうに、ダンサーと入っていますけれども、ダンスと全く関係のない方にもいろいろ感じていただける普遍的な作品だと思っています」「本作は希望について、最後まで粘り強くやり続ける気持ち、あるいは大好きなもの、情熱を傾けられるものについて描かれている作品。あとエイジズム、年齢に寄っての差別というものも描かれています。例えばイェフダがバレエを教えるには年を取りすぎている、僕自身は『踊るには年を取りすぎている』と言われたりした事です。ほかにも母子の関係性であったり、師弟関係、それから兄と妹の関係性、本当にいろんなところで共感していただける作品だと思っています」とメッセージを送りました。

 

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